孫式太極拳 総説

孫剣雲老師著「孫式太極拳」より


太極拳は中国特有の武術の一つで、いったい何時代に誰によってつくられたのか伝説は多く、考証を待つに留める。それでも太極拳には身体を強壮にし病気を退け長生きする効能のあることは、経験的に証明されている。その理由は太極拳が一種の「内外兼修」の運動であり、内には主に心を静め、外には主に体を鍛え各内臓器官を皆よく鍛練することにより、身体の自然環境に対する抵抗力を強め、疾病の予防と治療の効果を上げることができるからである。


動作を緩慢にし呼吸を深く長くすることは、循環器及び呼吸器の機能を強める。そのため太極拳の練習は肺病、心臓病、及び高血圧症の治療を助ける。さらに重要なことは総ての動作が意識の指揮によって進行するので、中枢神経の機能を強めることである。


太極拳の姿勢や動作には皆決まった要領があり、それぞれに意義がある。学習者は必ずこれに拠って練習すべきである。以下にそれらを紹介する。


頭 : 頭をまっすぐに支える。但し力を入れてはならない。頭頂は上を向き、精神を集中させる。


口 : 口は軽く合せ、舌先を上顎につける。鼻で呼吸し、細く一定にする。


肩 : 両肩はリラックスさせ下に垂らす。肩をそびやかしてはならない。肩をそびやかすと気が上にあがる。


肘 : 両肘は下におとす。肘をおとせば肩も下がり、腹中の気は丹田に沈む。

肘が墜ちれば両腕は湾曲し、いわゆる「曲中に直を求め、蓄えて後発す」となる

手 : 五本の指は緩めて開き(指をつけないよう)、手首も緩める。


胸 : 胸は緩め含むようにし、反らしてはならない。胸を含めば気は沈み、胸を反らせば気は昇る。気が昇ると上半身が重く下半身は軽く足がふらついて地につかない。拳術家の嫌うところで、ある。


腰 : 練拳時、腰を緩め落すこと。腰は全身の主であり、左右の旋転・前進後退などはすべて腰の力が貫くことによる。


足 : 両膝は曲げ、真直ぐに伸してはならない。虚と実をはっきりと分けること(体重は常に一方の足に置く)。そうしないと動作が活発にならない。


気 : いわゆる気沈丹田(臍の下三寸の所)は、すなわち深い呼吸を意味する。深い呼吸は太極拳の中で非常に重要な意義を持つ。しかし無理に気を押し下げてはならず、自然にまかすべきである。


静と動: 中国の正坐法は静中に動を求めるものであり、太極拳は動中に静を求めるものである。

練拳時は心を静かに保ち、精神を集中することにより、動作を円滑にすることができる。


意と力: 太極拳の特徴のひとつは、意を用い力を用いないことである。

これは太極拳が活きた力を必要とし、極めて柔軟かつ剛堅、極めて重くかつ敏捷であることを要求するからである。必要とし、極めて柔軟かつ剛堅、極めて重くかつ敏捷であることを要求するからである。意が届けば力が現れ、活きた力は自然に生じる。拙力を用いれば動作は滞り不活発となり力は外に浮いて、内家拳の要求に合わなくなる。


訳・後藤英二

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